聖地巡礼
「私は山口県の緑豊かなところで育ちました。毎日きれいな空気を吸って、ものすごくきれいな夜空を見てきた日々は、何ものにも代えがたい体験です」
これは「小学六年生」今月号の「ストップ!地球温暖化!」大特集に道重さゆみが寄せたコメントの一部である。ファンの方々ならばご存知のとおり、道重さゆみは過去のコメントやトークにおいても、地元への愛着を度々語ってきた。モーニング娘。のオーディションに合格した中学1年生まで生活した山口県の環境が道重さゆみのパーソナリティー形成に大きく影響していることは間違いない。道重さゆみをより深く知るために、ぜひこの環境がどのようなものであったのか、機会があればぜひ肌で感じてみたいと思っていた。この度、時間は限られていたものの、機会を持つことができたので、簡単にレポートしておきたい。
まず、芸能人とはいえ、やはりプライバシーは守られるべきである。道重さゆみ本人にとって迷惑となるような行為は本意とするところではない。では、道重さゆみの地元の情報は、どこまでが本人の意思で公表されているのだろうか、また、どこまでが周知の事実として知られていて、いまさら公表したところで本人及び関係者に不利益をもたらすものではないと判断してよいのだろうか。ファン歴が浅いオレにとっては、この辺りの判断がなかなか難しい。マスコミに流れた情報というところでは、オーディション合格時に地元の新聞がかなり特定可能なレベルで実家の住所、在学中の中学校及び卒業した小学校の名称までを公表したことがあったようだ。また、一般の書店やコンビニエンスストアなどで販売されている芸能人のスキャンダルを中心とした内容の雑誌には地元住民による談話が載っていたり、友人に宛てた手紙が流出して掲載されたりしていたようだ。また、特にオーディション合格当初は2ちゃんねるの地元スレッドなどに同級生や友人などの書き込みがいくつか見られるが、メディアの性格上真偽の程は確かではない。
道重さゆみ自身がダウンタウン司会の音楽番組「HEY!HEY!HEY!」出演時に「宇部線」という単語を連呼したことから、宇部線沿線に実家があったというところまでは問題ないだろう。また、常盤公園やカッタ君などと結びつけたネタやがファンの間でよく語られることや、地元の新聞に掲載された出身小中学校名から、新山口駅から約30分間の常盤駅近辺であることも特定できる。これは同じく地元の新聞が載せてしまった当時の実家の住所とも一致している。
翌日には予定が入っていたため、許された時間はわずかであった。滞在時間を少しでも長くするため、当日は始発で出発するつもりだった。ところが、寝る前にオーサカキングで収録された「ぷらっと☆ほーむ」の音源がアップローダーに上がっているという情報が入り、これをダウンロードし、iTunes及びiPodに転送して聴いたりしているうちに随分と遅い時刻になってしまった。結局寝すごしてしまい、目が覚めたのは午前8時すこし前。それから出発すれば、宇部線常盤駅に到着するのは午後3時すこし前。常盤公園の閉園は午後5時であり、それ以外にも周りたいところはたくさんある。また、翌日は早朝に山口県を発たなくてはならないため、ほとんど時間がない。交通費と宿泊費だけでも4万5千円はかかる企画である。やるのであればちゃんとやりたい。一瞬だけどうしようかと迷ったが、やはり行きたい。いま行かなくてはダメなんだ。ノートパソコン、デジカメ、携帯、財布、iPod、そして「17~アロハロ!道重さゆみDVD」をカバンに詰め込んで、とりあえず急いで家を出た。
京王線と山手線を乗り継ぎ、品川から新幹線に乗車した。先週のオーサカキング行きが実に7年ぶりの新幹線だったのだが、1週間も経たずにまた乗ることになるとは。午後2時過ぎに新山口駅に到着した。山口県で降りるのは初めてだが、新幹線の駅がある街だというのに緑が多く、時間がゆっくりと流れているような印象を受けた。宇部線に乗り換えると、運転室付近でなにやら大声で叫んでいる初老の男性がいた。窓を美しい自然の風景が流れ、乗客は誰も実に素朴な感じである。常盤駅に到着する手前で、向かい側の窓越しに突然、海が現れた。電車は駅で停まり、ワイシャツにネクタイ、スーツのズボンとショルダーバッグのオレが電車を降りると、背が低く人のよさそうな初老が駅員が「青春18きっぷですか?」と、なぜだかオレに聞いてきた。
常盤公園は宇部線沿線でも最大規模のレジャー施設という印象があり、そのため駅舎も大層なものを想像していたのだが、実際には小高くなった場所にポツンとある田舎の駅という雰囲気だった。ホームの向こうには海が見え、潮の香りとそこから吹いてくる涼しい風が心地よい。愛してやまない道重さゆみがこのような環境で育ってきたことを思うと、なぜだか鼻の奥がツーンとなり、泣き出す直前のような激しい感情が胸に押し寄せてきた。この海は九州に通じる周防灘というものらしく、海沿いの一帯は常盤海水浴場になっている。道重さゆみが「ラブハロ!」のDVDでバケツにクラゲを獲ってきたと話していた近所の海とは、おそらくここのことだろう。
宇部市内の地図は駅前の本屋ででも買おうと思っていたのだが、店がありそうな気配がまったくしない。向こうから歩いてきた中学生風の男子に「すみません。この辺りに本屋さんはありますか」と尋ねると、「本屋は無いですね」と答えてくれた。時間もあまりないので、とりあえず大通りまで歩くことにした。常盤公園へ向かう標識が出ていたので、そちらへ向けて歩いていく。田舎の風景がずっと続き、何度も立ち止まり、デジカメのシャッターを押した。
常盤公園に着き、大きな湖のそばの洗面所でネクタイを外した。ヒゲをまだ剃っていないことに気がついた。園内にある案内ボードと「ラブハロ!」DVDを重ねて写真を撮ったりしているうちに、白鳥がたくさんいる湖にたどり着いた。小さな子供を連れたお母さんたちが贅沢な時間を楽しんでいる。幼少時のさゆみんとお姉ちゃん、そして母重を想像してみる。遠くには観覧車も見え、思ったよりも大きな施設であることに気づかされる。正面入り口付近では有名なカッタ君のお話が音声で流れていた。タクシーの運転手さんから聞いた話だと、常盤公園の面積は日本国内の公園としては奈良公園に続いて2番目。日本国内の動物園などの白鳥のほとんどはここで生まれている。ペリカンは空を飛ぶ。遠くへ行っても必ず園内に戻ってくる。しかし、過去に園内で花火をやった者がいて、この時に逃げたペリカンは帰ってこなく、そのうちの1羽は北海道にいるらしい。そういえば、さゆみんの通っていた小学校にはよくペリカンが飛んできて、運動会の徒競走にも参加していたなんていう話を読んだことがある。
実はその小学校はここから近かったのだが地図も無かった為、そんなことは知る由もなく、コンビニに出会うまで国道190号線をひたすら歩いていった。観光客はおろか、会社員のような人の姿も見かけず、途中何度かパトロール中の警官に怪訝そうな目で見られているような軽い被害妄想にかられた。職務質問でも受けて、携帯のさゆみん待受とカバンの中の「アロハロ!」DVDが見つかれば何の弁解もできないのだが。セブンイレブンで地図とタオルを買い、小学校を確認する。途中ヲタっぽい人を見かけたのだが、まさか聖地巡礼の人ではないよな。新幹線でサンドウィッチを食べただけだったので、国道沿いのファミリーレストラン、フラカッソに入る。冷製明太子スパゲティとグラスビールを注文。地図を広げ、これから巡る予定の場所を確認、コースを考えるが中学校が意外と遠い。さゆみんも確か自転車通学だったはずである。店内は70sポップスが流れていていい雰囲気、途中でお母さんと入ってきた中学生女子の制服が、以前何かの画像でさゆみんが着ていたものに似ている気がした。さゆみんはかつてウェイトレスに憧れていたと語っていたことがあるが、おそらくこの店は実家から最も近いファミリーレストランである。応対してくれた高校生風のウェイトレスはとても愛嬌があり、自然な笑顔が素敵である。精算時に、中学校までの距離を聞こうと思ったのだが、変に思われないようにという取り越し苦労から、向かい側にある病院までの距離を尋ねるふりをした。「あの、東京から来たのですが、○○病院ってけっこう遠いですかね」「○○病院ですか...?」「えーと、○○中学校の近くの」「あー、歩いていくにはちょっと...タクシー呼びましょうか?」という訳で、タクシーに移動手段を変更。
当然病院の入り口で降ろしてもらったわけだが、中学校はちょうど向かい側。さゆみんが部活に励んでいたテニスコートも、道路からよく見える。ひとしきり感慨に耽った後、近くのセブンイレブンの前からタクシーを呼ぶ。この運転手さんがとてもいい人。「オープン・キャンパスか何かですか?」「いえ、ちょっと友人に会いに」と訳の分からない嘘をアドリブで言っている。「これからどちらへお帰りですか」「ええ、東京まで」。この後、先程書いた常盤公園の話だとかオレが尋ねた山口県のお土産についてなど、色々と教えてもらった。これはさゆみんもこんうさか何かで言っていたが、山口県のお土産ではういろうが有名。名古屋のものとはまったく違うらしい。また、宇部のかまぼこもかなり美味しいという。ファミレスやコンビニの店員も駅員さんやタクシーの運転手さんなど、今回ふれた人たちは誰も、東京に比べてとても温性に優れ、親切でやさしいように思えた。
常盤駅でタクシーを降り、次の巡礼地を目指して国道220号線を歩いていく。この辺りはおそらくさゆみんが住んでいた場所にとても近いはずだ。ちょうど陽が沈んでいく時間でもあり、色々な場所でデジカメのシャッターを押した。さゆみんがおそらく何百回も見たであろう風景だと思うと感慨もひとしおである。病院の名前や政治家の看板、家の表札などを見ていて思ったのだが、この辺りは重という文字が入った苗字が比較的多いようだ。途中、草江の近くのローソンで水分補給し、ふれあい公園や宇部空港を道路越しに見ながら途中で右折。しばらく歩いてガソリンスタンドを右折した踏み切りの手前にさゆみんが通っていたといわれる幼稚園がある。ここを確認し、通りに戻ってそのまま歩いて行くと、最後の目的地であるフジグラン宇部という商業施設に着く。
1階には書籍、CD、DVDなどを販売しているバッハ書店や食料品売場、フードコートやアパレル、雑貨などの専門店が入っている。サンリオショップを見て、おそらくさゆみんとお姉ちゃんもここで買い物をしたのだろうなと思う。バッハ書店の入り口付近にはラブ&ベリーの機械も置いてあった。2階にはゲームセンターや映画館があり、さゆみんはよくここでプリクラを撮っていたという。1階にペットショップがあり、ハムちゃんはここで買ったのかなと思ったが、フジグランの隣のホームセンター、ダイキにも大きなペット売場があった。ここで、一家で買い物をする道重家を想像するうちにオレにありえたかもしれないもうひとつの現在などに思いを馳せ、とても切なく泣きたい気分になった。
そろそろ宿を探さなくてはならない。なるべくなら常盤の近くがよかったのだが、地図を見ても実際に歩いてみても宿泊施設などありそうにない。とりあえずここからいちばん近い宇部岬駅まで歩くことにする。フジグラン宇部を出ると、向かい側は何かの工場のようになっていて、夕暮れ時であることも伴い、何やら未来的というか不思議な感じの写真が撮れた。駅へ向かって歩いていると、どんどん細い路地へ入っていき、そこには田舎育ちのオレにとって懐かしい感じのする古き佳き生活の匂いのようなものが息づいていた。宇部岬駅から宇部線に乗り、何軒かのビジネスホテルがある東新川で下車した。駅を降りると真っ暗で、ほんとうにこんなところにホテルなんてあるのかと思ったのだが、少し歩くとすぐに見つかった。ロイヤルシティホテルにチェックインし、205号室でカバンを降り、ノートパソコンを立ち上げた。この時点でデジカメのメモリはすでに満タンになっていた。携帯で電車の時刻を調べると、あと5分ほどで新山口行きがある。まだ20時30分くらいであり、ホテルの部屋に長くいても仕方ないので、大急ぎで駅へ向かう。ホームを渡る階段を走って、なんとか電車に間に合うことができた。宇部線はこの時間にもなると、もう1時間に1本くらいしか走っていない。
ふたたび常盤駅で下車。夕食をとろうかとも思ったのだが、たいしてお腹がすいていないことに気がついた。さっき見た和風レストランかめうら亭というのが気になっていたのだが、まだ食事はしないことにした。まだ21時だというのに真っ暗である。時折ウォーキングをする人や自転車が通り過ぎるが、他はしーんと静まり返っている。私が覚えている田舎の夜とは確かこんな感じだったことを思い出した。草江のローソンまで歩き、携帯の充電器とタバコとライター、缶チューハイを買う。レジでタバコの銘柄や価格について薀蓄めいたことを延々と話している初老の男がいたのだが、女子高生風の店員は嫌がる風でもなく、世間話でもするように対応していた。携帯で調べると、なんと次の電車まで1時間以上ある。誰もいない常盤駅のホームでタバコと缶チューハイ、携帯でmixiのコメント返しやモ娘(狼)を閲覧したりする。iPodを取り出し、「宝の箱」を再生した。優しいギターのイントロと久住小春の歌いだしに続いて、さゆみんの歌声が確かな質感をともなって歌いかけてくる。「悲しみはそのうち忘れることができる あきらめず進もう、その自分のために 坂道を行って来て登下校の日々 毎日は知らぬ間に季節をめくる 躓いて傷ついて笑顔になって 大人へと近づいてく 幼い頃の宝箱を開けたら、ガラクタだけれどいとおしい思い出よ 喜びは誰かと分かち合えたらなおいい 可能性はいつでも限りなく秘めてる」。デジカメから不要と思われる画像をいくつか消去して、時刻表や改札口に「ラブハロ!」DVDを置いて撮影したりする。
東新川に戻り、ホテルの向かい側のセブンイレブンで出雲風ぶっかけうどんや明太子のおにぎりや缶ビールやミネラルウォーターや着替え用のTシャツを買ってホテルの部屋に戻る。風呂を入れながら食事、デジカメの画像をパソコンに転送、携帯でモ娘(狼)を閲覧などを同時進行で行う。さゆみんのスレッドにこのブログを読んだと思われる人の書き込みがあったため、「それオレかも」とレスするが、「お前じゃねーよ ほんとうに狂ってるんだな」「いまさらヲタになる奴にロクなのはいない」などと瞬殺。確かに狂っているかもしれないし、ロクなものでもないと思う。しかし、つまりはそう言われるようなものこそを求めているのだろう。数分後に元々書き込んだっぽい人がまた現れ、「ここ数日でまとめてなかった? 24みたいでちょっと面白かった」と書き込みがあった。どうやら間違いなくここのことのようだ。
実は今回の目的のひとつにさゆの地元で「ラブハロ!」DVDを見るというのがあり、食事を済ませ風呂にも入り準備万端だったのだが、なんとパソコンがDVDを読み込まない。そういえばこっちのパソコンでこのDVDを見たことは無かった。何度か試してみたのだが埒があかないので、これはあきらめて保存してあった過去のハロモニの動画や静止画像などを見直す。深夜2時過ぎに就寝。
7時くらいには出発しなくては予定時刻までに予定の場所に着くことができないのだが、やはり5時前に起きてしまった。この場所のことをできるだけ長く覚えておきたい。できるだけたくさん記録しておきたい。眠っていたフロントの人を何度目かで無理矢理起こして、5時35分くらいにチェックアウト。朝6時前にふたたび常盤駅で下車。朝の空気がきれいで気持ちいい。こんな感じは何年ぶりのことだろう。とにかく時間ぎりぎりまで歩き、写真をたくさん撮り続けた。もうほんとうにこれでお終い。名残り惜しくはあったが、ずっといるわけにもいられない。この美しい風景、おいしい空気、当たり前の自然、やさしい人たち、このようなものが道重さゆみの原風景として存在していて、現在もさまざまな判断の場面で影響していることだろう。「ラブハロ!」DVDやラジオなどでさゆみんが大好きだと公言しているモーニング娘。の「歩いてる」という曲だが、実はオレは歌詞やメロディーが優等生っぽすぎてあまり好きではなかった。しかし、この朝、オレの頭の中ではずっとこの曲がリピートで流れ、ついに理解できたような気がした。「歩いてる その先の空へ まだ見ぬ未来へ 胸に愛を抱いて 遅いなんて言葉なんか耳を貸さずに いつの時も正義がある 瞳を閉じて 世界中の歌が聴こえるような距離になるさ 歩いてる 一人じゃないから みんながいるから 切に平和願って 歩いてこう 澄み切った空気を 新鮮な贅沢を 当たり前の自然を 歩いてる 一人じゃないから みんながいるから 切に平和願って 歩いてる」。
朝のホームに宇部線新山口行きの電車が到着する前に、ホームから海の動画を撮っていた。駅員さんが話しかけてくるので、結局また撮り直したのだが、こういう年を取った人がちゃんと存在感を持っている環境というのは、とても真っ当だなと思った。無情にも電車は到着し、いよいよこの町にもお別れを告げなくてはならない。電車の中にはなぜかこの時期に卒業アルバムを広げて、他の生徒のことを話している女子中学生が乗っている。山口弁と他愛のない無邪気な会話に、ついつい山口時代の道重さゆみを想像してしまう。やがて電車は新山口に着き、新幹線に乗れば、そこから品川、渋谷、明大前とすぐに日常が押し寄せてくる。しかし、けして忘れはしないだろう。
おやさゆみんノシ
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