ビートルズと私。

今週、ビートルズのアルバム14タイトルのリマスター盤が発売ということで、不況にあえぐCD業界は久々の祭に色めきだっている様子である。私はオリジナル・アルバムのほとんどとベスト・アルバムをすでにCDで持っていて、今回も購入の予定はいまのところ無い。だがしかし、サンプル音源を聴いた方によると、埋もれていた音なども結構あり、かなり違った聴こえ方がするとのことである。私は元来、いい音楽とはどんなに音質が悪かろうとよく聴こえるものだと思っていて、たとえば海辺に寝そべりながらつけていた雑音混じりのAMラジオから偶然流れて来た曲が素晴らしくて、思わずボリュームを上げてしまったというような、そういうのが好きなのだ。私の中学高校時代というのはオーディオ・ブームみたいなものがあって、アンプ、チューナー、プレイヤー、スピーカーとかをそれぞれ別のメーカーの物で揃えて、最高の音質を追求するみたいなのが流行っていた。当然、カネもかかる。そういうのに凝っている友人は、パイオニアのシステムコンポで聴いている私をバカにしていたが、音質にはこだわらないからとにかくレコードを少しでもたくさん買ってたくさん聴きたいという思いの方が強かった。オーディオ機器にこだわってかなりカネをかけているという友人の家に行ってみると、持っているLPレコードが中森明菜とシャカタクだけというようなこともあった。いや、中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」は名曲だし、シャカタクの「ナイト・バーズ」は私のiTunesにも入っているけれども。

ビートルズは私が本当に幼い頃にすでに解散しているので、リアルタイムでの記憶は一切ない。私の父は若かりし頃、レコード収集を趣味にしていたようだが、ほとんどがジャズであり、その中にもビートルズは無かった。なぜだかジーン・ヴィンセントの「ビー・バップ・ア・ルーラ」のドーナツ盤や叔母の物らしいモンキーズの4曲入りEP盤などはあったのだが。よって、家のステレオでビートルズを聴いたという記憶はない。後になって思うと、「ひらけ!ポンキッキ」で「ハード・デイズ・ナイト」だとか「オブラ・ディ・オブラ・ダ」だとかがかかっていたような気がする。また、私が本当に小さい頃、テープというのはオープンリールという物であり、カセットテープが出た時はかなり画期的だったらしい。家にごく初期のカセットテープがあったのだが、それは片面だけが録音できるようになっていて、もう片面にはカセットテープについての解説みたいなものが録音されていた。その中に、誰だかよく分からない人たちがコピーしている「ハード・デイズ・ナイト」が収録されていて、それで曲だけは知っていたりもした。

小学校高学年の頃に「サタデー・ナイト・フィーバー」などによるディスコ・ブームがあり、深夜放送などを聴くようになっていた私は、ビー・ジーズ、シック、アース・ウインド&ファイヤーなどの洋楽にも興味を持ちはじめる。しかし、なかなかレコードを購入するまでには至らず、買っていた物といえば、サザンオールスターズや榊原郁恵のシングルだったり所ジョージのファースト・アルバムだったりした。そんな中、ニュー・ウェイヴのポップ化という現象もあり、中でもナックの「マイ・シャローナ」やブロンディーの「コール・ミー」なんかが日本でもめちゃめちゃ流行り、ディスコに接近していくような部分もあった。

1980年1月、ポール・マッカートニーが成田空港で大麻所持のために逮捕された。このニュースは、新聞などでも大きく報じられた。これによって予定されていた日本公演は中止になった。当時、私はビートルズやポール・マッカートニーの曲などはほとんど知らなかったのだが、やはりこれだけ大きく報道されたということと、ちょうどそろそろ洋楽もちゃんと聴きはじめようかなと思っていた頃であり、このポール・マッカートニーという人物に興味を覚えた。そして、数ヶ月後に発売されたのが「カミング・アップ」というシングルである。当時の流行であったニュー・ウェイヴ風味が取り入れられ、ポール・マッカートニーのソロ作品の中でもかなり異質な部類の作品である。ポール・マッカートニーのファンの中で、この曲を代表曲に挙げる方はなかなかいないだろう。しかし、ラジオでしょっちゅう流れたり何かのテレビ番組で当時はまだ珍しかったプロモーション・ヴィデオを見たりするうちにすっかり気に入ってしまい、当時通っていた旭川市立光陽中学校の近くの小さなレコード屋さんでシングル盤を買った。これが私が生まれてはじめて買った洋楽のレコードである。

Paul McCartney - Coming Up

それから、NHK-FMの「軽音楽をあなたに」で聴いて気に入ったビリー・ジョエルのLPレコードを買ったりして、少しずつ洋楽を本格的に聴くようになるのだが、そんな中、その年の12月に飛び込んできたニュースがジョン・レノンの射殺である。これはテレビも新聞もかなり大きく取り上げていて、ポール・マッカートニー逮捕時の比ではなかった。しかし、これまたこの時点で私はジョン・レノンの楽曲を一切知らない。あの有名な「イマジン」ですら知らなかった。ところがやはり何かとても魅かれる物があり、FMラジオで放送された追悼番組をカセットに録音して何度も聴いたり、インタヴュー集を買って読んだりした。翌年正月のお年玉で、遺作となった「ダブル・ファンタジー」のLPを、行きつけのミュージックショップ国原で買った。同じ日に柏原よしえのファースト・アルバムのカセットなんていうのも、なぜだか買ってはいるのだが。

「ダブル・ファンタジー」からのシングル・ヒット、「スターティング・オーヴァー」「ウーマン」「ウォッチング・ザ・ホイールズ」などは、激しさはないが、とても優しく美しい曲である。このアルバムには、ジョン・レノンと小野洋子の作品が半々に収録されているのだが、小野洋子のいくつかの楽曲は当時の中学生には難解で過激すぎた。特に「スターティング・オーヴァー」の次に収められたA面2曲目の「キス・キス・キス」は、曲の途中に小野洋子が「あなた、抱いてよ、ねぇ」などと日本語で激しく喘ぐ部分などもあり、とてもじゃないが親がいつ入ってくるか分からない部屋で聴けるような代物ではなかった。よって、このアルバムは通してはあまり聴いていない。

ジョン・レノン追悼番組として、ビートルズを特集した番組などがテレビで放送され、それによって私は初めてビートルズをちゃんと見て聴いた。「抱きしめたい」などの初期の曲のインパクトがやはり凄いし、泣きながら歓声を上げる女性ファンの熱狂ぶりにも驚いた。この曲とビジュアル両方同時に社会現象としてのビートルズが初体験だったというのは、なかなか正しかったのかもしれないな、と後になってから思う。

あと、重要だったのが当時の担任の英語教師である。本当に変わった人で、1年に1回丸坊主に近いぐらい髪を切り、どんどん伸びていって、長髪に近くなったぐらいでまた丸坊主に近いぐらいに切る、というのを毎年やっていた。また、宝くじを毎回買っていて、当たったらすぐにでも教師を辞めるということも公言していた。年度のはじめには、生徒たちに向かって、そこにいる誰もが何億もの精子から選ばれたエリートなのだから、誇りを持てというようなことを訴えていた。英語の教科書は2学期までですべて終わらせた。3学期は何をやったかというと、ビートルズの曲の歌詞について学び、意味を理解した上で全員で歌うということをやっていた。それぞれが辞書で単語を調べ、解釈している間、教室にラジカセからビートルズのコンピレーション・カセットが流れていた。あの先生は本当に好きだったし、以後、私が英語を本格的に学ぶきっかけにもなった方だ。いまどうしておられるのか。

高校1年の冬、ミュージックショップ国原だったかファッションプラザOKUNOの地下にあった玉光堂だったか西武百貨店B館2階にあったディスクポートだったか覚えていないのだが、ビートルズ初期のベスト盤「1962年-1966年」、通称赤盤を買った。名曲が次から次へと飛び出す夢のような2枚組LPで、限定盤だったか何だったか不明なのだが、盤面が赤いスケルトン仕様になっていて、かなり感動した。これを買った日は真冬で、弟と妹と3人で旭川市街地に来ていた。その後で、すでに両親が行っている神楽町の祖母の家に行くことになっていた。そっち方面のバスに乗ったのだが、どうやら路線を間違えたことに気付き、途中下車して徒歩で行くことにした。川沿いを歩いて行ったのだが、猛吹雪で前方がほとんど見えない上に、どうやら道を間違えたらしく、手はかじかむし体温はどんどん奪われていくし、本当に死ぬんじゃないかと思ったのだが、どうにか祖母の家にたどり着いた。このことを強烈に覚えている。

それ以降は同時代の新譜を追いかけることに忙しく、自由に使えるおカネもそれほど無かったので、ビートルズの過去の作品を遡って聴くようなことはなかった。高校を卒業し、上京、大学に合格した春に初のCDプレイヤーを購入した。町田の丸井で赤いカードを使って買ったのだが、同じ日にすでにLPで持っていたスタイル・カウンシル「アワ・フェイヴァリット・ショップ」、カセットで持っていたRCサクセション「ハートのエース」も買った。その翌年に、ビートルズの作品が初CD化され、当時毎月買って読んでいた「ミュージックマガジン」などでも大々的に特集が組まれたりもしていた。アルバイトをしていてお小遣いもそこそこあったので、これはいい機会だと思って、順番に買っていくことにした。確か、何タイトルかづつ順番に発売されていたのだと思う。ところが4枚目ぐらいで飽きてしまった。この時期の有名曲はすでにベスト盤で持っていたというのもあるのだが、それ以上に、当時、趣味がヒップホップとかレア・グルーヴとかそっち方面に移行しつつあり、あまり積極的に聴く気分ではなかったというのもある。しかし、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」だけは買った。ビートルズの数ある作品の中でも最高傑作といわれ、ロックの歴史を変えたといわれる作品である。いまならばインターネットでサンプル視聴したりいろいろと聴く手段はあるのだろうが、当時の環境はそんなにもお手軽なものでもなかった。また、私は表向きパンク/ニュー・ウェイヴ~ヒップホップという音楽遍歴である体を取っており、周囲もそのような価値観の方が多かったため、その環境においては、ビートルズのレコードを聴くということがあまりカッコイイことではなかったのだ。そういう事情もあり、誰かから借りて聴くということもなかった。よって、この時点でこのアルバムの音源は一切聴いていなかった。

家に帰ってCDトレーにディスクを入れ、いざ再生。緊張の一瞬である。どんなに斬新な音楽が飛び出してくるのか。それまでにいろいろなディスクガイドや音楽雑誌などで読んだ知識から、妄想と期待は相当に膨れ上がった。正直言って、肩透かしだった。これただのロックじゃねえか、とも思ったし、ズンチャッズンチャッというような牧歌的なリズムの曲などは単純にかったるいと思った。いや、確かに優れた作品である。「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」などはもしかするとビートルズの最高傑作かもしれないし、「ルーシー・インザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」のサイケデリック感覚も素晴らしい。しかし、その時は妄想や期待の方がかなりハードルを上げてしまっていたのだ。それと、やはり同時代性というのはとても重要だな、とも思う。たとえば、セックス・ピストルズの「勝手にしやがれ」もあれだけさんざん過激だとか従来のロックを殺したとかいわれていて、初めて聴いたのが修学旅行のフェリーの中、同級生のウォークマンでだったのだが、良質のポップなロック・アルバムにしか聴こえなかった。ジョニー・ロットンの独特なヴォーカルは確かに唯一無比の物なのだが、私はすでにピストルズを聴かずしてPiLのレコードは持っていたりしたもので。そういうのが当たり前の時代だったのだ、たまたま。

だから、発売当時のインパクトというのはすごかったのではないかと思うのだが、実はあまり感心はしなかったと、当時は。パンク、ニュー・ウェイヴ、エレ・ポップだとかヒップホップだとかプリンスだとかを聴いてしまった耳で、60年代と同様の感覚で聴けという方が土台無理な話だ。「サージェント・ペパーズ」は絶賛しなくちゃならないみたいな空気の中で、当時PRESIDENT B.P.M.名義でヒップホッパーとして活動していた近田春夫だけが、私と同様の感想を書いていた。近田春夫は、当時音楽批評誌ではケチョンケチョンに貶されていたジョージ・マイケル「FAITH」を素直にカッコイイと認めていた唯一の「ミュージックマガジン」周辺の人物として、私は一目置いていた。というか、「オールナイトニッポン」や「星くず兄弟の伝説」を含め、この人の活動言動は以前からポップで好きだったのだが。

「サージェント・ペパーズ」にあまり感心しないまま、たまたまおカネがある時期だったのか、次の「ザ・ビートルズ」、通称「ホワイト・アルバム」も続けて買った。ところが、こっちにはズッポリハマってしまった。それぞれのメンバーが勝手にやった曲が多いということなのだが、ここが楽曲のバラエティーやポップと前衛のバランスになっていて、当時の私の感覚にもピッタリフィットした。同じ頃に出たプリンスの「サイン・オブ・ザ・タイムス」が同じような感じですごいと思っていたことも関係があるかもしれないし、その後、デ・ラ・ソウル「3フィート・ハイ&ライジング」やピチカート・ファイヴ「月面軟着陸」のようなタイプのバラエティーに富んだアルバムを愛好する傾向にも影響を与えたと思える。

当時、聴いたことはないんだが実は好きなんじゃないかと思っているアーティストにトッド・ラングレンがいたのだが、たまたまバーゲンに出ていたので、適当にLPを買って来た。ところがそれは実はトッド・ラングレンの代表作でもなんでもなく、片面が好きな曲をとにかくカヴァーしたという企画盤に近いものであった。ちなみに、「フェイスフル」というアルバムなのだが、この中に「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のカヴァーが収録されていた。キーボードの印象的なイントロに続き、夢見心地な曲調、曲の最後まで音響効果のような物が駆使されていて、まさにポップの玉手箱のような作品だった。これ以外に、私の大好きなビーチ・ボーイズ「グッド・ヴァイブレーション」などもカヴァーされていたのだが、これなどはかなり細かい部分まで再現されており、すごく気に入った。ところが、この時点で、私はビートルズ本家本元の「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」を聴いていないのである。つくづくおかしな入り方ばかりしている。調べてみたところ、オリジナル・アルバムには収録されていなく、後期ベストの青盤こと「1967年-1970年」、またはサントラEPとシングルをまとめてアルバムに仕立てた「マジカル・ミステリー・ツアー」に収録されているということが分かった。どちらもあまり買うつもりがなかったのだが、芝公園の東京プリンスホテルでのアルバイトが終わって、六本木ウェイヴに行くと、西武ライオンズ優勝記念のセールを店頭で行っていて、「マジカル・ミステリー・ツアー」のLPを1,000円で手に入れることが出来た。

家に帰って再生してみると、これが素晴らしかった。オリジナル・アルバムではない寄せ集め的編集盤ということであまり期待していなかったのだが、まずB面2曲目に収録された「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」がやはり最高であった。トッド・ラングレンのヴァージョンでかなり気に入ったものの、やはりオリジナルである。ジョン・レノンの弱く優しいヴォーカルがたまらなく良い。ポップと実験性のバランスも私の趣味嗜好に合致するものであった。歌詞も現実逃避的ではあるのだが、幼少時の理想郷を回想しているようでもあり、ドラッグの影響下のようでもあり、とにかく気持ちがいい音世界であり、それまでのビートルズの印象とは少し異なった物であった。当時最高に好きだったプリンスやザ・スミスと同レベルで、本当にビートルズというバンドが好きだと思えたのは、この時だったように思える。

これ以外にもシングル曲を集めたB面には「ペニー・レイン」「ハロー・グッバイ」「愛こそはすべて」といった有名曲が収録されている。また、元々は映画のサウンドトラックとして制作されたEP盤が収録されたA面だが、こちらも地味ながらサイケデリックだったり実験的だったりするかなり面白い曲が多い。中でも、やはり「アイ・アム・ザ・ウォルラス」である。「僕はセイウチ」という意味だが、とにかくイメージの羅列のような歌詞がすさまじく、サビの「アイア~ムジエッグマン、アイア~ムジエッグマン、アイア~ムザウォーラス、ググーグジュー」という、意味はよく分からないのだが、明らかに存在する不安や恐怖に対する叫びみたいな凄味を感じ、一気にお気に入りの1曲となった。間違いなく邪道なのは百も承知なのだが、私にとってビートルズの1枚といえば、この「マジカル・ミステリー・ツアー」なのである。

マジカル・ミステリー・ツアーMusicマジカル・ミステリー・ツアー

アーティスト:ザ・ビートルズ
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2009/09/09
Amazon.co.jpで詳細を確認する

それから、まだ買っていなかった他のアルバムも順番に揃えていき、「リボルバー」「ラバー・ソウル」の頃がやはり素晴らしいなとか、「アビイ・ロード」もなかなかいいぞ、というふうになっていったのである。映像集のヴィデオが出た時にはBOXセットを買ったり、BBCライヴの未発表音源のCDも買った。しかし、「アンソロジー」シリーズやシルク・ド・ソレイユのショーのサントラ「LOVE」は買わなかった。「LOVE」のショーそのものは、たまたま会社でラスヴェガスに連れて行ってもらい、見ることが出来て、えらく感動したのだが。

おそらくリマスター盤はよっぽどのきっかけが無い限り買わないとは思うが、これをきっかけにビートルズの音楽を改めて聴き直してみたり、思い出をたどってみたりしたのはなかなか楽しかった。まだビートルズのCDを持っていない音楽ファンには絶好のチャンスなので、ぜひ買ってみると良いと思う。私のおススメは「マジカル・ミステリー・ツアー」だが、やはりこれは邪道。世間一般的に評価が高いのは、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ」「リボルバー」「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」「アビイ・ロード」「ラバー・ソウル」「ハード・デイズ・ナイト」の順番だろうか。多少の順番は異なるかもしれないが、各種名盤リストの常連なのはこのあたり。また、オリジナル・アルバム未収録のシングルも多いビートルズだが、初CD化の時は、これらが「パスト・マスターズ」として2枚に分かれて発売された。今回はこれが2枚組として発売されるのだが、「抱きしめたい」「シー・ラヴズ・ユー」「ペーパーバック・ライター」「ヘイ・ジュード」などはこっちの方に入っているので、これを入門編にするのもまたアリかもしれない。おカネに余裕がある場合は、思いきって35,800円のBOXセットを買っても間違いない。Amazonだといまなら29,020円で買えるみたいだ。オマケのDVDが付いているから再販制度にかからず、ゆえに値引き販売が出来るのだな。今回のリマスター再発シリーズには、赤盤・青盤や「1」などのベスト盤は含まれていない。また、音質にこだわらないのならば、今回のリマスター盤発売に伴い、以前のバージョンの中古盤が軒並み値下げされると思われるので、そちらを狙ってみるのも良いのではないかと思う。

Amazonのビートルズのページ


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Base Ball Bearのことなど。

帰京後に寝て起きてもどうにも疲れが取れないなと思い、歩数計を確認をしたところ、大阪滞在中の2日間で6万歩以上歩いていたことが分かった。NMEはオアシスからのノエル・ギャラガー脱退を大きく取り上げていた。レディング&リーズ・フェスティヴァルのレヴュー特集などかなり充実している雰囲気があったが、あれこれ片付けなくてはいけないことがあったので、全体をサラッと俯瞰して記事としてまとめるだけにしておいた。

定額制音楽配信サービス、NapsterにBase Ball Bearsのアルバム、シングルが多数ストックされているので、就寝時や移動中の時間などを利用してインディーズ時代とメジャー2枚目のアルバムを聴いている。昨日初めて聴いて、以来6、7回は聴いている最新アルバム「(WHAT IS THE) LOVE & POP?」は、仕事場でもCDをかけていて、すでに「神々LOOKS YOU」は空で歌えるぐらいにまでなった。

過去のアルバムを聴いて感じたことは、このバンドが新しい作品を発表するごとに確実に成長を遂げているということだ。しかし、ヴォーカルでありソングライターの小出祐介が描く世界には、夏、青春、黒髪、ときめき、17歳、制服といったワードが象徴するようなもので一貫していて、その求めるべき理想のイメージを抱きつつも、段々と逞しさを身につけてきているという印象を持つ。インディーズ時代の「HIGH COLOR TIMES」というアルバムにおいては、まだベースの関根史織のコーラスがあまり多くはフィーチャーされていないが、メジャー後の作品においては、やはりこの女声ヴォーカルが、楽曲のイマジネーションを拡げる上で重要な働きをしているように思える。

この関根史織というベーシストは、バンドの他のメンバーの1学年後輩の23歳であり、プログレ音楽を愛好し、雑誌の連載も持っているという。高校時代は水泳部で、ピアノが弾けたのでバンドにはキーボードとして加入したが、未経験のベース転向を命じられ、ベースギターを買ってすぐに覚えたという。ヴォーカルの小出祐介とは学年こそ違うものの、誕生日が1日違いである。

小出祐介のリードヴォーカルと関根史織とのコーラスのかけ合いが、Base Ball Bearの快感妄想ポップの大きな魅力の1つになっているのは間違いないのだが、この関根史織の声というのが、自己主張するでもなく、かといってことさらクールさを強調しているようでもなく、はたまた天然系や不思議系かといえばそれも違う。とにかく、自然で透明なのだが、ひじょうに存在感がある。記憶をたどってみると、レモンヘッズの1992年~1993年、つまり「イッツ・ア・シェイム・アバウト・レイ」「カモン・フィール・ザ・レモンヘッズ」の幾つかの曲におけるジュリアナ・ハットフィールドの役割に近いものがあるのではないかと感じた。

気になって調べていると、舌を出してお茶目な表情をしたり、赤ブチの眼鏡をかけて知的な雰囲気だったり、巫女のコスプレをしてベースを弾いたりという画像が次々と見つかった。また、2ちゃんねるにファンスレッド的なものも立っていて、アイドル顔負けの妄想がスパークした気持ち悪いレスが飛び交っていて微笑ましく思った。道重さゆみなどは、ハロプロの中でもファン層の中心が変態紳士ということもあり、妄想スレやレスを誘発しやすいのだが、それに匹敵しうるレベルの書き込みなどもいくつか見られた。また、スレッド住人は、関根史織のことをシオリーヌと呼んで崇拝しているようだ。

通勤途中で何年かぶりにロッキングJAPANなどという雑誌を買った。梅田のブックファーストでサラッと立ち読みしたBase Ball Bear小出祐介の2万字インタヴューが目当てだ。というか、これしか読む気はない。山崎洋一郎がまだ編集長をやっていることに驚いた。見出しがいきなり「誰かに嫌われてるとか、ずーっと後ろのほうで鳴ってる感じではあるんですけど、高校3年生になってそれが加速しちゃって、「俺は死にたくないから、全員死んでくれ」みたいな」である。

東京都の小岩出身で、実家は金物屋でマンションも経営している。ヤンキー文化の中で、裕福な家庭の子供というだけで、理不尽に嫌われたりする。この時に、小学生ながらに「せめて自分を嫌いじゃない人たちをちゃんと見つけておこう」と思ったらしい。その後、学校ではバスケットボールが上手くなったり学級委員や生徒会の会長として活躍し、内申書には「将来国政に関わる可能性があります」と書かれる。バスケットが強い千葉の高校に入学し、すぐに部活動も始める。学年を引っ張っていくようなタイプの生徒と仲良くなり、学校生活は順調かに思われたが、ある時から突然、理由も分からず理不尽にその友達に嫌われ、やがて学年全体が自分を無視するような状態になっていった。結局はバスケット部も辞め、そもそもバスケットをやる為に入った高校なのに、何をやっているかよく分からなくなっていった。そこで、ギターを手にしたのだという。

高校2年生の頃に急に確率変動が起こり、全てが良い方向に転がり出す。友情、恋、バンド、まさに青春という日々が訪れる。小出祐介が楽曲に描く理想の原風景というのは、この時代にあるのではないかという気がする。しかし、高校3年生になると、その反動でなぜだかすごく醒めた感じになり、孤独感を深めていったという。

実に面白い。今日の不安定な人間関係、コミュニケーション状況、その中で絶対の孤独を突き抜けた強靭さを身に付け、本当に必要な物を探していく。そうなると、純粋無垢な恋愛がもたらす全能感であったり、かけがいのない友情がもたらす安心感だったりするのだろう。だから、Base Ball Bearは青春を高らかに、肯定感全開に奏でるのだ。

ここで思い出すのがやはり岡村靖幸だ。やはり、青春のときめきを絶対的価値として、独特のポップ・ワールドを展開したが、援助交際をはじめとする性の商品化が加速するにつれ、時代感覚との乖離が顕著になり、次第に作品を生み出せなくなり、最終的にはドラッグで逮捕された。

小出祐介が「レモンスカッシュ感覚」と名付ける「一生求む感覚」とは、やはり青春、夏、ときめき、黒髪、制服などが象徴するものだが、それを抱えて大人でいることとはどのようなことなのだろう。

「ホワイトワイライト」という曲では、「いつも同じ場所で遊んでたあの頃のみんな大人になる準備をしてる もし変わりはしないものがあるなら それはきっと友情だっていう 忘れたくない気持ちがあるなら 忘れないよ、残しておこう 時代に願いを置くなんてしないさ」と歌われる。

仕事が終わり、寝る前にテレビをつけると、深夜の音楽番組にBase Ball Bearのメンバーが出演していた。繊細さと逞しさを兼ね備えた美青年、小出祐介。とにかくキュートな関根史織。無口でシャイで酒呑みだというギターの湯浅将平、他のメンバーと比べるとワイルドな見た目だがとても人の良さそうなドラムスの堀之内大介。それぞれキャラクターも立っていて、面白い。すでにブログで読んで知っていたのだが、関根史織が初体験のDSのドラクエで、キャラクターに「ニッコリ」という名前を付けたり進むのが遅かったりして小出祐介と堀之内大介をいらつかせているという仲よしエピソードも微笑ましいが、一方で湯浅将平は1人で「信長の野望」をやっているらしい。このバンドの音楽を初めて聴いてからまだ2日とちょっとしか経っていないのに、随分と詳しくなったものだ。それぐらいこのバンドには魅力がある。番組が終わってフジテレビの「キャンパスナイトフジ」にチャンネルを替えると、熊井友理奈が出ている「(WHAT'S THE) LOVE & POP?」のCMスポットが流れた。

Base Ball Bear - 17歳

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レモンスカッシュ感覚。

久しぶりに音楽を聴いて感動した。Base Ball Bearsという日本のバンドである。名前ぐらいは聞いたことがあったが、実際に音楽を聴いたことはなかった。ポップ音楽の受容にとって、同時代性とか世代というのはやはり重要なファクターなのではないかと思う。たとえばここ数年の日本のバンドやアーティストで、スタイルや方向性はかなり私好みというのもいくつかあったのだが、やはりその影響を受けた元ネタが分かりすぎたり、歌詞の内容がどうしても若すぎたりというので、積極的に聴くまでには至らなかった。古くはRCサクセションや佐野元春、最も鬱屈していた時期には岡村靖幸やフリッパーズ・ギター、その後も唯一、GREAT3というバンドだけはかなり好きなのだが、これも最後に新譜を買ってから、もう10年以上経つ。以来、日本のアーティストの新譜を買ったのは、ハロー・プロジェクト関連のみである。

Base Ball Bearsの発売されたばかりの3rdフルアルバム「(WHAT IS) LOVE & POP」を今日の朝、初めて聴いたが、以来、繰り返し繰り返し聴いている。ヘッドホンで聴きながら天神橋筋商店街を歩いていて、思わず泣き出しそうになる瞬間すらあった。

仕事で音楽や映像の商材を扱っている為、名前ぐらいは知っていたのだ。しかし、上記の理由から特に聴いてみようとも思ってはいなかった。モーニング娘。やハロー・プロジェクトのことを中心に雑談するというのが趣旨のインターネット掲示板を閲覧していて、Berryz工房の熊井友理奈がBase Ball Bearのアルバム告知CMスポットに起用されていることを知った。熊井友理奈といえば、身長176cmとアイドルとしては高身長の美少女として知られるが、いわゆるロッキングオンJAPAN系のバンドがハロプロのアイドルをCMに起用するというのはなかなか面白いと思った。また、このBase Ball Bearsというバンドについて書かれた文章やコメントの中に、「妄想」というワードが多用されていたり、「プリンス、岡村、BBB」などという記述があり、かなり引っかかった。プリンスと岡村靖幸といえば、私の過去の音楽体験の中でも特に重要である。それと併記されうるようなアーティストがそう簡単に存在するとは思えないのだが。○○年代のビートルズとかいう類の誇大広告だろうか、程度に捉えていた。ともあれ、熊井友理奈が出演している件のCMクリップを見てみた。

高校の制服を着た熊井友理奈がレモンを齧る。すると、真っ赤な血飛沫が飛び散る。そして、「青春なんて、キモチ悪い。」。これはいいんじゃないだろうか。プリンスや岡村靖幸と比較されていたので、打ち込みファンク風味などを連想していたのだが、バックで流れる音楽はギターが主体のポップ・チューンだった。

道重さゆみのラジオ「今夜もうさちゃんピース」のテキスト起こしを終え、大阪のホテルで深夜3時過ぎに寝た。朝7時半ぐらいに目が覚めたのだが、もう少し眠っていられる。何か音楽でもと思い、定額音楽配信サービスのNapsterプレイヤーを立ち上げる。今週配信開始の新作をスクロールするが、あまり目ぼしいのが無い。期待していた日本先行発売のザ・クリブズのニュー・アルバムは残念ながらカタログに追加されていなかったので、来週ダウンロード購入しようと思う。Base Ball Bearのニュー・アルバムが追加されていたので、あまり期待せずに再生した。実は仕事先にも2日前に入荷していたので、今週発売なことは知っていたのだが、積極的に聴いてみようとはあまり思っていなかった。

ベッドに横になりながら、ノートパソコンの小さなスピーカーから流れる音楽を聴いていた。何だろう、このスーッと入ってくる感じ。パンク/ニュー・ウェイヴ好きな私の感性に強く訴えかけてくる曲調及びサウンド、そしてメロディーは快感度の高い超ポップである。ビッグ・スターとかティーンエイジ・ファンクラブとか、こちらも私が大好きな、文句なく気持ちがいいパワー・ポップとも共通する部分がある。そして、歌詞のところどころが妙に引っかかる。また、どことなく文学的な繊細さを感じさせるヴォーカルと、クールで無色透明でありながら無自覚なエロスを発散している女声コーラスとの掛け合いもいい。これはちょっとちゃんと聴いてみようかと思い、シャワーを浴びている間にケータイ電話機兼音楽プレイヤーに転送した。

ヘッドホンで聴きながら、ホテルをチェックアウトし、ラッシュアワーの地下鉄で移動した。

「つららの様に刺さった誰かの笑い声が融けて 春が息吹く 人差し指で指し示すのは 未来 君の手の平がふれる度に 溢る想い」
「changes 変わってく サヨナラ 旧い自分 新現実さ 新しい何かが変わってる すべてがいま変わってく すべてが始まる 深呼吸ひとつ 合図にして駈け出してく」
「明日が来ない気がした 明日が来てホッとした 神様はいないってずっと思ってた 見分けがつかないように 人混みに紛れてた僕に 春が息吹く」

絶対の孤独を知る者のみが語りうる喪失と再生の物語、それが圧倒的な快感を伴って、紡がれる。

「神様になったらどうする? (変えたいものばかりでも) 泣き笑いのいっぱい詰まった人生を」
「暗黒時代に背をひるがえし さあ 腕まくり 夢追い人」
「なるようになるよという (その言葉まだまだ) 信じることできないとしたっても そうだよ」
「桜が舞うよ For you (あるがまま)生きよう」

この確信に満ちた言葉の数々はどうだ。

そして、アルバム6曲目に収録された「ホワイトワイライト」という曲だが、これぞ平成ニッポンを「生きる」為に必要な音楽である。

「少年の吸う煙草みたいに 煙に巻かれた日々があってもいい ただ目指すところが決まったら 弱音を吐いたり泣いてはいけない」
「暗い未来はいらない 今日も願ってる僕らは 空に願いを放ってくだけさ」
「君が願うように 僕が思うように 誰が望むように 光る世界だ 君が願うとおり 僕が思うとおり 誰もが望むとおり 淡い青春が描かれてゆく」
「忘れたくない気持ちがあるなら 忘れないよ 残しておこう 時代に願いを置くなんてしないさ」

そして、「BREEEZE GIRL」は奇跡的に完璧なピュア&イノセントな夏の恋愛アンセムだ。

「1秒で十分なんだ ディスティニー感覚 薄荷の味の午後にすれ違う君に 黒い髪をなびかせて 釘付けのmy eyes 君はそう 女の子の最高傑作」

この冗談になる一歩手前の変態的な本気の妄想ワールドこそが、岡村靖幸やプリンスとの共通する部分なのだろう。絶対の孤独と格闘し、そこから這い上がらんと構築する素晴らしい世界、救世主や女神としての存在を宿命づけられるガールフレンド。

これが端的に表れているのが、タワーレコード梅田NU茶屋町店のコメントPOPによると、初期の楽曲を思わせるという、「SIMAITAI」である。

「いま、君がいない ただそれだけで何もかも面白くない 戯れ事も夕食も 何をするじゃなく、誰とするか」
「君としたいことは沢山 遺跡めぐりもしてみたい アンコールワット ティオティワカン 有り金すべて鞄に詰めて」
「3つ程年下の君へのアティティュードは 俄然ファーストクラスで強引なスローモーションな瞬間をあげたいけど 僕は君の天使性にやられることしか出来なくて」
「抱けど持て余した想い 全部伝えたいけれど 新しい形容詞を 捻り出してしまい太陽」

また、「海になりたいpart.2」においては、「あなたが今日もまた泣くのなら 僕は あなたを包み込む 海になりたい」「愛は与えるものじゃなく 包み込むものだと あなたが笑ったときに 僕は気付いたんだよ 海になりたい」と歌う。

そして、「レモンスカッシュ感覚」においては、「I Feel レモンスカッシュ感覚 僕の中で稲妻 一生求む感覚 例えばラブ 例えばポップ 第6感でときめいて」「一生消えぬ感覚 ふりむいた君の輝き」、2コーラス目の同じパートでは、「例えばキス 例えばセックス そういうもんとは分けて」と歌われ、この時点で、このバンドの重要性を確信した。

アルバム最後にして表題曲でもある「ラブ&ポップ」においては、「永遠に続いて欲しい日々がやってきて コマ送りにしたいほど満ちている」という理想の状態が歌われるが、曲中では絶対の孤独と他者との繋がりへの欲求とが切実に表現されている。

日本語による音楽作品をこれほどリアルに切実に感じたことといえば、岡村靖幸「DATE」やフリッパーズ・ギター「カメラ・トーク」、あるいは「エレファントカシマシⅡ」を初めて聴いた時ぐらいしか記憶にない。他にはいとうせいこう「MESS/AGE」、GREAT3「メタル・ランチボックス」などもこれらに近い印象があるが、いずれも10年以上前の話である。

あまりにも衝撃を受けたので、大阪から帰りの新幹線では、Wikipediaや公式ページなどを読み漁ったり、YouTubeでビデオクリップやライヴ映像を見まくったりしていた。梅田のブックファーストでロッキングオンJAPANを立ち読みすると、ヴォーカルでありソングライターの小出祐介2万字インタヴューが掲載されていた。色白で繊細な雰囲気を持ったなかなかの美青年である。詳しく読んではいないが、かなり鬱屈した青春を過ごしたようなことが書いてあった。バンドは4人組で1984年~1985年生まれというから、石川梨華世代だろうか。Wikipediaによると、小出祐介は私も大好きなXTCを敬愛しているとのことで、なるほどと思った。それにしても、あの大傑作「スカイラーキング」がリリースされた時に、まだ生まれて1、2年しか経っていなかったということか。

Napsterには、シングルや過去のアルバムなど19タイトルが入っているのだが、これから少しずつ聴いて行こうと思う。

私は初めて聴いたが、このBase Ball Bearというバンド、2002年に結成され、すでにかなり人気があるようだ。シングルはトップ10していて、今週発売された最新アルバムもオリコンのデイリーランキング第6位にチャートインしている。また、来年1月には武道館公演も決定しているということだ。ベース&コーラスの関根史織は映画「リンダ リンダ リンダ」にも女子高生バンドのベーシスト役で出演しているようだ。少なくとも、私のような新規のリスナーを獲得したという点では、熊井友理奈のCM起用は成功したといえるだろう。


Base Ball Bear - Changes
Base Ball Bear - 神々LOOKS YOU
Base Ball Bear - BREEEZE GIRL
Base Ball Bear - Stairway Generation


(WHAT IS THE)LOVE&POP?Music(WHAT IS THE)LOVE&POP?


アーティスト:Base Ball Bear

販売元:EMIミュージック・ジャパン

発売日:2009/09/02
Amazon.co.jpで詳細を確認する

05 名盤ガイド |

上半期ベスト・アルバム2009。

「今夜もうさちゃんピース」テキスト起こしと「Sleeping with NME」のローテーションのみになりつつあるここな訳だが、道重さゆみちゃんのおかげで各方面で雪崩のように処理すべき案件が押し寄せ、それをバッサバッサと片付けて行く快感に目下陶酔中ゆえに、処理しなくてはならない情報を処理することで手一杯という状況。困難に打ち克つ為の葛藤こそが美でありえ、また、そこにおいてはけして自分らしさを失ってはいけないという原則、それを貫くことによってのみ獲得される生の充足、こういったものが一気に押し寄せている感じである。これらはすべてにおいて100%道重さゆみの存在があったからこそということが出来、更に今後は実際的な価値としてこれを具現化させていく次第である。

通り一遍な近況報告はこれぐらいにして、先週の「今夜もうさちゃんピース」において道重さゆみも言っていたように、今年もあっという間に半分が終った。という訳で、毎年恒例の上半期ベストである。といっても、ここココログでやるのは初めてか。いままでは別のブログとかソーシャルネットワークなんちゃらとかで発表していたんだが、今やインターネッツでの発表場所がここだけになっているので、とりあえずここでやっておく。

年々新作アルバムを聴く量が減ってきていたんだが、今年は激増した。候補作50作品とか簡単に挙げられた。まず新譜を半年で50枚以上も聴いていることが驚きなのだが、CDは1枚も買っていない。正確にはプレゼント用に1月に2枚だけ買ったんだが、自分用のは一切買っていない。まず、Napster。これが神がかり的に凄まじい。月額1980円とかでPCと携帯電話のどっちでも聴けるコースに登録しているのだが、人気アーティストの新譜とかも発売と同時に追加されるので、かなりいい。日本盤CD出る前に輸入CD発売と同じタイミングで追加なんていうのもよくあること。それから海外のストリーミングでアルバム丸ごと流してくれるサイトだとかMP3通販とかそういうので、主に聴いたんだなあ。その結果、上位40枚をカウントダウン形式で発表する。選出時の気分が多分に反映されているがゆえ、数日後にやったら順番がかなり入れ替わっている可能性が大アリ。だが、とりあえず。

まずは40位から30位まで。

40 GRACE/WASTELAND - PETER DOHERTY
39 FITS - WHITE DENIM
38 SECRET, PROFANE & SUGARCANE - ELVIS COSTELLO
37 PRELIMINARIES - IGGY POP
36 DUKE PANDEMONIUM - MARMADUKE DUKE
35 FEVER RAY - FEVER RAY
34 THE SPIRIT OF APOLLO - NASA
33 QUICKEN THE HEART - MAXIMO PARK
32 PANDEMINIUM ENSUES - GLEN TILBROOK
31 HOLD TIME M WARD

続いて、30位から21位。

30 OUTER SOUTH - CONOR OBERST & THE MYSTIC VALLEY BAND
29 NOBLE BEAST - ANDREW BIRD
28 THE CRYING LIGHT - ANTONY AND THE JOHNSONS
27 BITTE ORCA - DIRTY PROJECTORS
26 YEARS OF REFUSAL - MORRISSEY
25 JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS - MANIC STREET PREACHERS
24 WALL OF ARMS - THE MACCABEES
23 ART BRUT VS SATAN - ART BRUT
22 KINGDOM OF RUST - DOVES
21 21ST CENTURY BREAKDOWN - GREEN DAY

GREEN DAYがMORRISSEYやMANIC STREET PREACHERSよりも上位にきているというまったくもって私らしくない格付けになっているのだが、MORRISSEYのもMANIC STREET PREACHERSのも大好きでよく聴いたのだが、GREEN DAYのアルバムは私の好みの音楽性ではないにもかかわらず、力強くポップでバラエティーに富んでいて、否応なく惹きつけられた。続いていよいよトップ20の発表でございます。

20 THE SPINNING TAP - GRAHAM COXON
19 DARK DAYS/LIGHT YEARS - SUPER FURRY ANIMALS
18 A MAN WOMAN A MAN WALKED BY - PJ HARVEY
17 MIDDLE CYCLONE - NEKO CASE
16 WALKING ON A DREAM - EMPIRE OF THE SUN
15 TONIGHT:FRANZ FERDINAND - FRANZ FERDINAND
14 MANNERS - PASSION PIT
13 WILCO(ALBUM) - WILCO
12 VECKATIMEST - GRIZZLY BEAR
11 MY MAULDLIN CARRIOR - CAMERA OBSCURA

20位から18位はGRAHAM COXON(BLUR)、SUPER FURRY ANIMALS、PJ HARVEYと、1990年代に愛聴したアーティスト達の新譜がそれぞれランクイン。それぞれにユニークな持ち味をより深化させ、かつポップ音楽としても良質な傑作である。17位のNEKO CASEは実はこれまでちゃんと聴いたことがなかったのだが、カントリー風味の音楽性が妙にハマった。16位のEMPIRE OF THE SUNは浮世離れした楽天世界な訳だが、去年のMGMTなんかにも通じるこんな時代やさかいにご陽気に行きまっせといったヤケクソ感として勝手に読み取ったがゆえ、結果としてヘヴィロテ化したという好例(何を言っているのか次第によく分からなくなってきた)。15位FRANZ FERDINANDはもちろんデビュー時から大好きなんだが、3作目の今作はよりダンス寄りな作風。前2作に比べると圧倒的に聴かなくなったがそれでもこのニューウェーヴ風味はやっぱり好き。14位PASSION PITはいろんな音楽をゴチャマゼにして面白い最新型のポップスを創っちゃおうという私が最も好ましく思うタイプの若者達っぽい。13位のWILCOは大人気バンドなんだが、実は今までろくにちゃんと聴いたことがなかった。何度かちょっとだけ聴いたことはあったんだが、私の趣味には地味すぎる感じがしたのだ。今回はたまたま「Sleeping with NME」の記事を作っていて、TouTubeに上がってた1曲を聴いて気に入ったしだい。苦味を知った者が奏でる甘いポップ・チューンほど私の心を動かすものはない訳で、かなり上位にランクイン。12位GRIZZLY BEARはこれまた最近のUSインディーなんだが、実にいい。11位CAMERA OBSCURAは私が愛してやまないネオ・アコースティックだとかギター・ポップだとかC86だとかいった繊細かつキューティーな気分が辛抱たまらん。

さてさていよいよトップ10である。まず、第10位...。

10 THE ETERNAL - SONIC YOUTH


The EternalMusicThe Eternal


アーティスト:Sonic Youth

販売元:Matador

発売日:2009/06/06
Amazon.co.jpで詳細を確認する

いわずと知れたオルタナ音楽界の大御所にして重鎮の大ベテラン・バンドである。90年代前半は「GOO」とか「DIRTY」とかメチャメチャ聴いたし、80年代の「SISTER」とか「DAYDREAM NATION」とかは明らかに画期的な作品であり、私もいまだにiTunesに入れている。だが、もう10年以上もこのバンドの新譜は買っていなかった。ところが、メジャーからインディーズに戻って第1弾のこのアルバムにずっぽりハマってしまった。何だ、この瑞々しさは。ポップとアヴァンギャルドとを行ったり来たりする、このバンドの真骨頂が円熟味を増して高度に再現されたかのような素晴らしいアルバム。

9 YONDER IS THE CLOCK - THE FELICE BROTHERS

Yonder Is the ClockMusicYonder Is the Clock

アーティスト:The Felice Brothers
販売元:Team Love
発売日:2009/04/07
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カントリーとかフォークの要素が強いいわゆるアメリカーナと呼ばれる音楽ジャンルが人気で、UNCUTという雑誌などでは以前からかなり推している訳だが、根がパンク/ニューウェーヴな私などは、若い者が何を好き好んでそんなジジ臭い音楽をやっているのか、などと感じていたところもある。いや、好きなバンドやアルバムも結構あるんだが、その上で。だがしかし、これはいい。「ハックルベリーの冒険」などでお馴染みのアメリカ作家マーク・トゥエインの世界観をテーマにしたというこのアルバムは、アメリカの伝統的な楽器や音楽イディオムを駆使した圧倒的な世界観を持っている。もうとにかくこんな時代で、アメリカなどはかなり深刻な感じなのだろうが、ゆえにこのような強度を備えたファンタジー装置の必要性というのが高まっているのだろうか。


8 NO LINE ON THE HORIZON - U2


No Line on the HorizonMusicNo Line on the Horizon


アーティスト:U2

販売元:Vertigo

発売日:2009/03/03
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このバンドも80年代には新譜が出れば必ず買ってよく聴いていたのだが、1991年の「ACHTUNG BABY」を最後にすっかり聴かなくなってしまっていた。が、しかし、このアルバムを聴いて偉大さを再認識。これだけバンドが巨大化肥大化しつつ、ショウビズ的世界とかとも付き合いながら優れた作品を創り続けていくのだというオトナの覚悟ともいうべきもの、どうしようもない怒りだとか諦念だとかそれゆれに溢れ出る優しさだとかがビンビン迫ってくる作品。これもNapsterでお手軽に聴けたからこそ出会えたアルバムであり、CDでしか聴けない環境だったとしたら聴かずじまいだった可能性が高い。

7 IT'S BLITZ - YEAH YEAH YEAHS


It's Blitz!MusicIt's Blitz!


アーティスト:Yeah Yeah Yeahs

販売元:Interscope/DGC/Dress Up

発売日:2009/03/31
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超絶カッコいいギター・バンドが新機軸のダンス・ビートに挑戦し、いまひとつ残念な結果に終わるという事例は児数知れず見てきた訳で、今回のYEAH YEAH YEAHSに関してもそんな予感がしないでもなかったのだが、これは素晴らしい。ニューヨークのアート系パンクの血筋を引き継ぐバンドとしての見事な進化形を見せ付けてくれた。

6 TOGETHER THROUGH LIFE - BOB DYLAN


Together Through LifeMusicTogether Through Life


アーティスト:Bob Dylan

販売元:Columbia

発売日:2009/04/28
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40年ぶりに全英アルバム・チャート第1位に輝いた大ベテラン、BOB DYLANの最新作。映画サントラ仕様のトラディショナルな作風がアメリカーナの流れにも乗っかって円熟かつ新鮮、トラディショナルかつトレンディーな味わい。

5 FURTHER COMPLICATIONS - JARVIS COCKER


Further ComplicationsMusicFurther Complications


アーティスト:Jarvis Cocker

販売元:Rough Trade

発売日:2009/05/29
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BLUR再結成というイヴェントがきっかけでブリットポップ再評価の動きもあるが、そんな中で発表された元PULPのフロントマン、JARVIS COCKERのソロ第2弾。STEVE ALVINIがプロデュースと聴いた時には意外な感じもあったのだが、これが実にいい化学反応を起こしている。JARVISの卓越したポップ感覚は健在だが、その根底にある怒りの感じが、サウンドとヴォーカルにうまく表れている。

4 LA ROUX - LA ROUX


 La Roux La Roux
販売元: iTunes Store(Japan)
iTunes Store(Japan)で詳細を確認する

昨年のMYSTERY JATSの路線変更だとかLADYHAWKEの登場などで、80sリバイバルも来るところまで来たかという印象で、若干食傷気味だったのが正直なところ。こちとらリアルタイムで体験した世代で、もはやちょっとやそっとじゃ評価してやらんぞ、と、かつてTHE STONE ROSESとかTHE LA'Sを60年代の焼き回しで全然新しくないと言っていた何も分かっちゃいないクソジジイどもに感じた熱い怒りも忘れ、そんな構えでいたところ、このアルバムにはすっかりやられた。ここまでやられちゃあグーの根も出ない。いわゆるエレポップが基調になっているんだが、シンセの音色だとかメロディー・ラインだとか、ディテールが本当にウマい。上手いし旨い。つい先週出たばかりで、ヘヴィロテ中につき、かなり高い順位になったが、本当によく聴いている。

3 PRIMARY COLOURS - THE HORRORS


Primary ColoursMusicPrimary Colours


アーティスト:The Horrors

販売元:XL/Beggars Group

発売日:2009/05/05
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ゴス系ヴィジュアル・バンドという印象が強く、1STアルバムも買ったもののあまり聴かずに段ボールで眠っていたTHE HORRORS。しかし、この2NDで大きくバケた印象。JOY DIVISIONとかを思わせる重厚かつ陰鬱なトーン。こんな時代だからと言ってノスタルジーだとか高度なファンタジーに逃げ込みがちな風潮の中、この作品の孤高っぷりもものゴッツい。初聴で度肝を抜かれてヘヴィロテ化したものの、その後、実はあまり聴いていないのは、BGM的に聴き流すのが困難だからに他ならない。体力気力が漲っている時に、またしっかり対峙してみたい。

2 WORKING ON A DREAM - BRUCE SPRINGSTEEN


Working on a DreamMusicWorking on a Dream


アーティスト:Bruce Springsteen

販売元:Columbia

発売日:2009/01/27
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BRUCE SPRINGSTEENが第2位なんてあまりにも保守的すぎはしないだろうかという気もしたのだが、どう考えてもやはりここに来てしまう。それぐらいよく聴いたし、今後も聴き続けるであろう重要なアルバム。BRUCE SPRINGSTEENは25年前の「BORN IN THE U.S.A.」で夢中になって以来、過去の作品を遡ったりして、ずっとお気に入りのアーティストの1人なのだが、正直新譜を熱心に聴くということはここしばらく無かったし、もう2度と無いのだろうなという気がしていた。それだけに、まさか2009年に私がBRUCE SPRINGSTEENのアルバムをここまで好きになるとは思ってもいなかった。世界大恐慌に端を発する暗い時代を照らす希望の歌という意味で、これほど力強い音楽は無い。支援していたBARAK OBAMA大統領の就任、アメリカの国民的行事であるスーパーボウルでのパフォーマンス、主題歌を書き下ろした映画「THE WRESTLER」主演のMICKEY ROUKEがゴールデン・グローブ賞を受賞、GLASTONBURY FESTIVALへの初出演にしてヘッドライナーなど、BRUCE SPRINGSTEEN本人にとっても第3の黄金期ともいえるトピックが目立つ昨今、時代がこの人の歌を必要としているのかもしれない。

1 MERRIWEATHER PAVILION - ANIMAL COLLECTIVE


Merriweather Post PavilionMusicMerriweather Post Pavilion


アーティスト:Animal Collective

販売元:Domino

発売日:2009/01/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

アメリカン・インディー好きの間ではすでに有名で、アルバムも何枚も出しているグループの最新作。私は前作の苺ジャムのジャケットが気になって聴いてみたのだが、自分のどストライクの好みに対しては前衛的にすぎるというか突き抜けたポップさに欠けるという印象で、あまり印象に残っていなかった。しかし、今作は分かりやすさが増して私にはちょうどいい感じ。とにかく脳内がお花畑な超絶快楽音世界とでもいうべきものが展開されており、「PET SOUNDS」が歴代最も大好きなアルバムである私が21世紀のTHE BEACH BOYSではないかと思っている程なのである。

こんな感じで2009年上半期は実に充実した音楽生活が楽しめた訳だが、下半期もこれと同じぐらいの素晴らしい音楽に出会えるとするならば、それはなんて素晴らしいことだろう。とりあえず8月にはARCTIC MONKEYSか。ここでTHE LEMONHEADSのカヴァー・アルバムを入れるのを忘れたことに気付いたが今さら仕方がないので、年間ベストに乞うご期待ということで、さようなら。

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スカイラ―キング/XTC

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iTunes

ポカポカ陽気の日が続いていると、つい来るべき夏に思いを馳せてしまう。いつも大したこともしないまま、あっという間に過ぎてしまうんだが、夏向けのカセット、いまならばプレイリストを作ったりしてテンションを上げてしまうものだ。

この時期になると毎年聴きたくなるアルバムにはアズテック・カメラ「ハイ・ランド、ハード・レイン」、ザ・スタイル・カウンシル「カフェ・ブリュ」、ヘアカット100「ペリカン・ウェスト」などがあるが、私にとって究極の夏のアルバムといえば、今回紹介するXTCの「スカイラ―キング」である。

XTCは1970年代後期にポスト・パンクの流れで出てきたバンドで、初期の作品はパンク的なエッジと卓越したポップ感覚が程よいバランスを保った感じであった。次第によりビートルズ的な英国ポップス寄りに変化していった。

私が洋楽を聴きはじめた1980年代前半においては、「ミュージックマガジン」や「ロッキングオン」といった批評性の高い音楽雑誌でいつも高評価されていたが、現在のようにインターネットなどはなく、レコード屋さんにも試聴機などほとんど無かった当時、実際の音を耳にすることは一切無かった。高校生までといえば、なけなしのお小遣いから吟味して月に1枚ぐらいLPレコードを買うのが精一杯であり、冒険などはとてもじゃないが出来なかった。そんな経緯で、何となく通好みの小難しいバンドと印象を抱いてしまったのだ。

高校卒業と同時に上京し、大学に入るとアルバイトも始めた。自分の自由になるお金が出来てくると、次第に食費を切り詰めてでも、1枚でも多くレコードやCDを買うという間違った生活がいよいよ本格的に始まる(実をいうとそれはこの時に始まったことではないのだが、それはまた別の話)。

発売されたばかりの「スカイラ―キング」は当時の音楽雑誌で、とにかく大絶賛の嵐だった。そこで、ろくに聴いたこともないくせに、小田急相模原のオウム堂というレコード屋さんで、これのCDを買った。

部屋に帰ってCDプレイヤーにディスクを入れた。ワンルームマンションのベッドに飛び込み、目を閉じた。スピーカーからは虫の鳴き声が聞こえ、それに続いて、どこか懐かしいメロディカのような音色。そして、先行シングルでもあった「グラス」へとなだれ込む。草むらの上に寝転んだ思い出について歌われたこの曲は、英国的な湿り気のある極上のメロディーとアレンジで、私を夢見心地へと誘ってくれた。

そこからはまさに魔法のような超絶ポップのめくるめく世界が展開する。アコースティックだったり室内楽風だったり、バラエティーにとんだ楽曲が並ぶが、全て素晴らしく、捨て曲など無い。以来、20年間以上にも渡って、私のオールタイム・フェイバリッツの1枚であり続けている。

実はこのアルバムは、アメリカのポップ職人的シンガーソングライター、トッド・ラングレンがXTCをプロデュースした最初で最後のアルバムである。この英米のポップスの大御所の夢のコラボレーションに、ポップスファンは大喜びし、実際に素晴らしい作品が誕生した。しかし、ポップ界の職人はまた、偏屈で意固地でもあったため、現場はまさに戦場であったらしい。XTCのフロントマン、アンディ・パートリッジはこのアルバムの仕上がりに納得していなく、当時はインタビューの度に不満を述べていた。しかし、それからしばらく経った後では、このアルバムのことを「夏の日々が1つのケーキになったような作品」だと述べている。私もこれに同感だ。今年もこのアルバムを聴いた日から夏が始まる。

GRASS - XTC

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ウェルカム・プラスチックス/プラスチックス

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iTunes

ついにプラスチックスのオリジナル・アルバムとシングルすべてがiTMSで購入したりNapaterで聴いたりできるようになった。これは実にめでたい。

プラスチックスのデビュー・アルバム、「ウェルカム・プラスチックス」は、私が初めて自分のお小遣いで買って文字通り擦り切れるぐらい聴きまくったLPレコードだった。そればかりか、当時の中学校で使っていたノートだとか自宅の勉強部屋にあったテープカッターなど、至る所にこのバンドのロゴマークを描いたり、本当に夢中だったのだ。

当時はテクノ・ブームというのがあり、もちろんその中心的存在はYMOことイエロー・マジック・オーケストラ。地方都市の公立中学校においてもその人気は絶大であった。ちょっと悪そうな奴らも「ライディーン」とかはディスコ・ポップと同じような扱いで聴いていたし、流行音楽なんかには見向きもしなさそうなガリ勉タイプも熱心に聴いていた。周囲の友達の誰かはLPレコードを持っていたので、私はカセットテープにダビングしてもらい、自分で買うことはなかった。ベスト盤的なカセット・テープだけはいつかのお年玉で買ったような記憶がある。

あれは一体何だったのかさっぱり覚えていないのだが、ちょうど1970年代から80年代に替わる頃、全てが一気に軽くなったような気がする。情念系の山口百恵が引退し、超ポップな松田聖子がデビューしたり、パルコ出版から出版されていた「ビックリハウス」だとか「宝島」といった雑誌を中心としたポップな文化人、たとえば糸井重里だったり橋本治だったりが脚光を浴びたりだったりとか、もともとフォーク出身だったRCサクセションがド派手なメイクと衣装で復活したりとか、漫才がMANZAIになって若者に爆発的な支持を得るようになったり、そういったことが同時多発的に起こっていた。(実はこの変化を本格的に感じ取ったのは、田原俊彦が「哀愁でいと」で「ザ・ベストテン」に初登場した時だったりするのだが)

小学校高学年から中学校にかけて、ごくごく普通の少年だった私は、当時、見ていなければ話題についていけなかった「ザ・ベストテン」という歌番組を見ていたが、人と比べて特別に音楽が好きという訳でもなかった。こうした歌番組といえばアイドルだとか歌謡曲の歌い手が出るものだったのだが、1970年代後半あたりから、ヒットチャートの上位がいわゆるニューミュージックと呼ばれていたシンガーソングライター系の歌手たちに占拠されていった。オフコース、アリス、松山千春、さだまさし、中島みゆきといった人達だ。世良正則、原田真二、Charというニューミュージック御三家なんていうのもあった。歌謡曲の歌手もニューミュージックの人達が提供する重く暗い曲を歌う傾向が強くなり、演歌が復権したりもしていた。キャンディーズ解散、ピンクレディー失速によって求心力を欠いたアイドルポップス界においては、石野真子、榊原郁恵、大場久美子といった人気者もいて、歌もそこそこにはヒットしていたが、チャートの中心的存在になることは無かった。時代はよりシリアスで本格的なものを求めはじめた。ちょうど背伸びがしたい年頃の私たちもそれに乗っかって、歌謡曲やアイドルをバカにして、ニューミュージックの方がエラいというような論調になっていた。しかし、実際のところ、気まじめすぎて退屈していたのだ。

坂本龍一、細野晴臣、高橋ユキヒロという、すでに日本の音楽界で実績を残していたメンバーによって結成されたのがYMOことイエロー・マジック・オーケストラだが、地方都市の中学1年生はそんなメンバーのバックボーンなどは知りようもなく、ただ何だか新しくてカッコよくてオトナには理解できない(ここ重要)ものが出てきたことにワクワクしていたのだ。

YMOことイエロー・マジック・オーケストラのヒットによって何となく盛り上がってきた感じがしたテクノポップ・ブームだが、そこにグループ分けされていたバンドたちの音楽性というのは、実はかなり異なっていた。プラスチックス、ヒカシュー、P-モデルといったところが代表格であった。インターネットなんていうものが存在しない当時の地方都市の中学生にとっては、雑誌とテレビとラジオだけが頼りだが、ついにNHKの夕方の番組だとか民放の金曜夜の番組までが、テクノポップやニューウェーブのバンドを特集するようにまでなっていた。

私がプラスチックスに興味を持ったきっかけというのが、また実にくだらない。FM雑誌だとかオリコンとかで名前やビジュアルは知っていたのだ。しかし、音は全く聴いたことがなかった。ある日、サザンオールスターズの桑田圭祐がやっているFM番組を聴いていたら、アイドルの倉田まり子が好きだということを言っていた。そこで、私も倉田まり子に興味を抱き、シングル・レコードを集め出したりしていたのだ。ある土曜日の午後、学校が終わって家に帰ってテレビをながめていると、芸能人がものまねで競い合うという類の番組をやっていて、それに倉田まり子が出ていた。そこで真似していたのが、プラスチックスの「デリシャス」という曲だったのだ。それまで聴いたことがあった日本の音楽とは全く異質の音楽性と、単語の羅列で意味を成すことことを拒否しているようでありながら、どことなく批評性が感じられる歌詞など、実に衝撃的であった。机の引き出しや貯金箱など、家中の至るところから小銭を集め、自転車でレコード屋さんへ行き、「デリシャス」がB面に収められた「トップ・シークレット・マン」を買った。

テクノポップを表現する際に、当時よく使われたのがピコピコサウンドという言葉だが、このプラスチックスの「デリシャス」はまさしくピコピコの極みである。要はシンセサイザーの音色を指しているのだが、実はプラスチックスというバンドは、シンセサイザーを多用していることを除けば、きわめて真っ当なポップスをやっているのだ。実際にデビュー・アルバムではモンキーズの「恋の終列車」やビートルズ来日の際に作られた歓迎ソングのカヴァーなどをしている。佐藤チカのファニーでポップなヴォーカルも、まだ洋楽などほとんど聴いていなかった私には斬新なものだったし、何よりも歌詞である。「テレビニンゲン マイコンマニア プラスチックフェイス テクノロジー シャネルノパウダー リヒテンシュタイン ピジャマママ メロンパパ デリシャス オールデイ デリシャス オールナイト デリシャス オールデイ デリシャス オールナイト」。これが1コーラス目の歌詞の全てである。

スタイリスト、コピーライター、作詞家といったそれぞれが本業を持ったメンバーにより結成されたという軽さも魅力ながら、アートワークやファッションなどに見られるセンスの良さ、そして、決して熱くなりすぎずにクールに批評するユーモア感覚、というこのあたりが当時の私が求めていたものと完全に合致した。いま振り返ると、私の人格形成にこのバンドの影響は意外と大きいな、と思う訳だ。

デビュー・シングルの両面も収録されたアルバム「ウェルカム・プラスチックス」はこのようなプラスチックスのポップ感覚が全開の傑作である。コンプレックスや経済的不平等といった深刻な問題を軽快に笑い飛ばしたり、大企業の名前などを羅列して、「ユー・アー・ロボット」と連呼したりと、もう最高である。音楽性はワイヤーなどのポスト・パンク世代のUKニュー・ウェーヴに通じるところがあるが、2004年ぐらいにこのあたりの音楽はリヴァイヴァルし、フューチャーヘッズなんかにはかなりプラスチックスに近いものも感じる。このアルバムは、オリコンの上半期ベスト50に入っていた。これはなぜだかラジオ雑誌の「ランラジオ」で見たことを鮮烈に覚えている。この「ランラジオ」に携わった伊藤英俊が初代編集長を務めた「ラジオライフ」に、先日、道重さゆみがアイドルとしては異例の表紙&インタヴュー掲載をされていた。全くの余談だが。

プラスチックスは海外でもロキシー・ミュージックのフロント・アクトを務めたり、イギリスでNMEのライバル紙的存在だった「メロディー・メーイカー」の表紙を飾ったりするが、2枚目のアルバム「オリガト・プラスチコ」、そして、それまでの楽曲をよりヘヴィーにアレンジした「ウェルカム・バック」を残して解散した。その後も、CD化や未発表ライヴ音源、トリビュート盤、DVDなどの発売が数年おきにあり、その度に再評価の動きがある。そして、ついにこの度、iTunesやNapsterのカタログに加わった。


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